「変身」とかいうとんでもない悪夢

変身-と聞いたらあなたは何をイメージするだろうか。

ただの憶測だけど、なんか「一般市民がヒーローに」 みたいなことを想像するんじゃないかな。 
もしくはポリジュース薬とか。 
でも、この変身はちょっと違う。  
 
「ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目を覚ますと、自分が寝床の中で1匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。」    
  ー「変身」 フランツ・カフカ 新潮文庫ー 
 
 あまりにも有名なこの出だし。 
あまりにも最悪なこの目覚め。 
一体誰がこんなこと想像できるの…? 
羨ましがるのもおこがましい感性。 
とにかく、朝起きたらザムザ君は 
人間サイズの百足になってたんだと。 
殺虫剤の出番ですな。 
でも彼はそんなこと思わない。 
だって、
この虫の体だといつもの体勢で眠れないから。 
そっちの方が変身したことより
よっぽど大事だから。  
 
これが夢だったらよかったよ。 
ああ、そうだったらよかったさ。 
でも、彼の家族の真っ当な反応を見ていると、 (めちゃめちゃ気味悪がる父とショックを受ける母) いやでも現実に引きずり戻される。
 夢の中の話にもできないところこそ悪夢。  
 
どうやらザムザ君はサラリーマンで、作者・カフカさんもサラリーマンだったらしい。 
もしかすると彼は、いや彼らは、自分の人生を変えたかったのかもしれない。 
いつまでも変わり映えしないつまらない日々。
 鬱積し続ける人生に対する不満、欲望。 
それらの思いが、虫への「変身」としてあらわれたんじゃないのかなぁ。 
私だったら虫にはなりたくないけど。絶対。 
 
 読んでいるとぬるりとした気持ち悪さを楽しめる傑作。 読後には、新たな世界観を開けるはず。 虫が嫌いな人は…
マンガ版はやめたほうがいい…よ…  
 
単純に興味を持ってる人から、「明日、なんか朝起きたら虫になってそうな気がする…」と思ってる人まで、文字通り全ての人におすすめです。